時代劇やアニメの名作を多数手掛けた後の1980年代、2時間ドラマで音楽を多数手掛けた
渡辺岳夫ですが、以前の記事ではあえて取り上げませんでしたが、長編テレビドラマの数少ない代表作の中で、これは代表作に含まれるのではないか、という作品があります。
それはあの有名な金田一耕助です。
前回の記事
ナベタケ最大ギャップ珍成功例と彼女の胸部どアップ ドラマ「アタックNo.1」「天才バカボン」「キューティーハニー」秘聞日本を代表するテレビドラマを代表する名キャラクター金田一耕助の映画界や映像業界への貢献
金田一耕助は、通産映画主演350近く(長編映画歴代最多主演数)、通産は時代劇の超大スター片岡千恵蔵が初代金田一耕助を演じ、映画『
三本指の男』(監督・松田定次、ヒロインは原節子、当時としては異例の全国の再公開は2度を記録)の1947年から2020年まで73年間(ジャニーズタレントなどを主演にして現在も進行中)で映像作品が制作されている、国民的な探偵を主人公とした人気シリーズです。千恵蔵版は総集編や前後編版、再公開などを含めると10本以上の記録が存在、
金田一耕助の映画、映像化作品はまだまだ現代劇映画のシリーズを作る時代ではなかった時期(1950年代までの日本映画のシリーズ物は時代劇映画が中心、現代劇の長期シリーズはほぼ皆無でした)の現代劇映画シリーズの先駆けの一つ(同俳優の多羅尾伴内シリーズと)ともなり、のちの多くの映画や映像作品に多大な影響、1969年からの現代劇映画シリーズの「男はつらいよ!」(時代劇の股旅の現代劇映画風への置き換えを行っている、特に股旅は戦前に当たった股旅トップ俳優の千恵蔵の影響大)も結果的に影響を受けていますし、「男はつらいよ!」の渥美清は金田一役を1度演じています。これも影響です。
千恵蔵版は当時の現代劇としては長期間の1947~1956年の9年間のロングヒットを記録、その後も映画とテレビの映像作品だけでも数産で数十名が金田一耕助を演じています。今の金田一耕助は空気的な知名度が先行していますが、特に昔は大きな人気がありました。
映画『
三本指の男』の音楽は日本映画に貢献した音楽家の一人の大久保徳次郎です。個人的には
渡辺岳夫はこの人の影響をひそかに受けている部分があるように思えます。音楽的に攻めたものが多く、個性的で独創的なセンスを持つという面では共通です。
映画秘宝EX 金田一耕助映像読本 (洋泉社MOOK 映画秘宝 EX)2013年に生誕100年(映像化はまだまだ先)を迎えた記念に発刊されています。
金田一耕助 片岡千恵蔵 三本指の男 松田定次 原節子 ジャニーズ 大久保徳次郎 渡辺岳夫 男はつらいよ! 渥美清渡辺が関与した名探偵・
金田一耕助シリーズは1時間枠の連続ドラマの1977年の
横溝正史シリーズI(全7作の通産27回)と1978年の
横溝正史シリーズII(全9作の通産30回)のヒットの流れを組む、2時間枠中心の長編ドラマシリーズです。
全3区分が存在している「
古谷一行の
金田一耕助シリーズ」(1977~2005)の中の一つの区分のテレビドラマの「名探偵・
金田一耕助シリーズ」、は1983~2005の長期間で通産32本が作られました。
横溝正史シリーズIや
横溝正史シリーズIIほどの印象は弱めですが、スマッシュヒットを記録、最後の3区分目となります。
名探偵・金田一耕助シリーズ 横溝正史シリーズI 横溝正史シリーズII 古谷一行の金田一耕助シリーズ
渡辺岳夫は確認できる「名探偵・金田一耕助シリーズ」の32作中9作の音楽を担当
通産 放映年数 放送タイトル
2 1983年 ミイラの花嫁
3 1984年 獄門岩の首
4 1985年 霧の山荘
5 1986年 死仮面
6 1987年 香水心中
7 1988年 不死蝶
8 1988年 殺人鬼
9 1989年 死神の矢
12 1991年 魔女の旋律
金田一耕助シリーズの意外な音楽家対決 故人ナベタケVS現役の音楽家起用とカンバックとリベンジの履歴
ミイラの花嫁など全体は「金田一耕助シリーズ ミイラの花嫁 嵐の夜にうぶ声が聞える」のように詳細のタイトルでもありますが、複雑なため、今回は一言の題名で統一させています。
1作目の1983年2月放映の本陣殺人事件は喜多嶋修(妻はアイドル的な若手女優だった内藤洋子)が音楽を担当で、2本目のミイラの花嫁から9本目の1989年放映の死神の矢、実は10作目から
渡辺岳夫は音楽の担当から外れています。これは彼が1989年に亡くなったことが大きな原因、前回記事も登場している「赤かぶ検事奮戦記」は彼の死後も音楽が使われている別の例です。
とはいえ、12作目の魔女の旋律では再び渡辺が音楽に起用されています。これは彼の死後から2年ほどであり、
真鍋理一郎に音楽が一時変更されたものの、1度きりのカンバックを実現、評価されていたことを物語る部分といえるのかもしれませんが、13本目からは再び
真鍋理一郎が逆リベンジを果たしています。
悪魔の唇<名探偵・金田一耕助シリーズ> [VHS]悪魔の唇は「名探偵・金田一耕助シリーズ」中、通産32作の20本目にあたります。音楽は真鍋です。
ミイラの花嫁 喜多嶋修 内藤洋子 死神の矢 魔女の旋律 悪魔の唇「名探偵・金田一耕助シリーズ」に音楽カンバックの真鍋理一郎
渡辺岳夫は、「名探偵・金田一耕助シリーズ」以前の「
古谷一行の金田一耕助シリーズ」の音楽は担当していませんが、
真鍋理一郎は横溝正史シリーズIと横溝正史シリーズIIで通産6、9エピソード(通産57回)の全般の音楽を担当しています。
1989年の9本目の頃に名音楽家の渡辺岳夫が亡くなったため、彼に白羽の矢がたったのは、過去の「
古谷一行の金田一耕助シリーズ」の音楽の担当履歴があったことの信用があり、「名探偵・金田一耕助シリーズ」で再起用にいたった要因だったといえるでしょう。
渡辺岳夫は映画音楽135作ほど、
真鍋理一郎は映画音楽135作ほど、両名は本数でほとんど並んでいます。これが意外です。年齢は1933年と1924年で、真鍋のほうが9歳ほど年上です。テレビドラマは渡辺岳夫が数多くの膨大な本数と数十の代表作、
真鍋理一郎のテレビドラマ音楽の担当本数自体が少なく代表作も少数、渡辺岳夫はアニメ音楽を映画やテレビで多数担当、真鍋理一郎はほぼ見当たりません。
真鍋は映画の片岡千恵蔵の『多羅尾伴内シリーズ』(別名・七つの顔の男シリーズ)を元としたテレビドラマ『七つの顔の男』(1967~1968、高城丈二の主演)の音楽も手掛けていますが、明確な最大の代表作は「
古谷一行の金田一耕助シリーズ」です。渡辺と真鍋はテレビドラマにおいて大きな差があるといえるでしょう。代表作数の本数と手掛けたジャンルの多彩さにおいて渡辺が凌駕していますが、映画においてはそこまで大きな差がありません。
渡辺の映画は娯楽路線がほとんど、アニメ多数、特撮なし、真鍋は娯楽もありますが異色路線が多め、アニメなし、特撮ありです。代表的な本数だけだと、どちらかといえばテレビドラマと同様に渡辺に軍配です。
千恵蔵は初代金田一、彼が音楽を手掛けた
古谷一行の金田一、金田一を通じてつながり、またテレビドラマ『七つの顔の男』を通じても、千恵蔵と間接的なつながりがあります。これも不思議です。
真鍋理一郎というと初期は日活の音楽を多く手掛け、師匠の有名音楽家の
伊福部昭(初期のゴジラの音楽担当)の流れもあり、ゴジラシリーズの1971年の『ゴジラ対ヘドラ』と1973年の『ゴジラ対メガロ』の音楽も手掛けています。
多羅尾伴内シリーズ 七つの顔の男シリーズ 高城丈二 伊福部昭 ゴジラ対ヘドラ
ゴジラ対メガロ真鍋理一郎と大島渚 あの作品が2人のコンビを引き裂いた
真鍋は、独創的な異色映画で知られる名匠の
大島渚の映画の音楽の印象も強く、多少地味な作品が多いわけですが、
大島渚の初期の映画監督作の音楽を多数手掛けており、真鍋は約30本近くの監督数の中で7作の音楽を担当しています。
真鍋理一郎と大島渚の映画 7作
1959 愛と希望の街 松竹(大船) *大島のデビュー2作目
1960 青春残酷物語 松竹(大船) 3作目
1960 太陽の墓場 松竹(大船) 4作目
1960 日本の夜と霧 松竹(大船) 5作目
1961 飼育 製作=パレスフィルム・プロ 配給=大宝 *独立系映画 6作目
1962 天草四郎時貞 東映(京都) 7作目
1963 小さな冒険旅行 *独立系映画 8作目 2作目から8作目まで7作連続で音楽を担当しています。東映で製作した多額の費用を費やした大作の『
天草四郎時貞』(大川橋蔵主演)が興行的に大失敗したことが、彼とのコンビを解消した理由にように考えられます。失敗を忘れる、過去を振り払うためにその後の全般の映画は、別な音楽家を起用するようになったともいえるでしょう。
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『
天草四郎時貞』です。負の遺産から興味を持つ、これも映像作品の価値
大島渚は真鍋とのコンビ解消後、林光や武満徹をほぼ中心の音楽家として起用するようになり、保険会社の日本生命(ニッセイ)が「日生劇場映画部」として制作に関与した、広告要素の60分ほどの中篇映画『小さな冒険旅行』(1963)以降は自分の作品で真鍋理一郎を起用することはありませんでした。
ちなみに通算30本ほどの
大島渚の映画のうち、坂本龍一の音楽はたった2本だけです。色々確認するだけでもマスコミや電波各社に誇張されている気がしました。
大島渚 パレスフィルム・プロ 天草四郎時貞 大川橋蔵 林光 武満徹 日本生命 日生劇場映画部 ニッセイ 小さな冒険旅行 坂本龍一 飼育 大江健三郎 三國連太郎日本人側の捕虜のアメリカ軍の黒人兵の飼育作品
今回は渡辺岳夫から真鍋理一郎、2名の名音楽家と金田一耕助シリーズ、さらに互いの共通点と大島渚や渚を巡る音楽家のライバルたちともイス取りゲームなどテレビドラマと映画の意外な攻防について記事にしました。
個人的には大江健三郎の短編を原作、日本人側の捕虜のアメリカ軍の黒人兵にもクローズアップした、異色作の「飼育」がインパクトが強く、
飼育真鍋理一郎と大島渚のコンビ映画7作の中で一番印象に残ります。大名優の三國連太郎が事実上の日本人の主演として映画に出演しています。
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