知られざるテレビドラマの名匠の現実に迫ります。前回記事の『非情のライセンス』第1シリーズの40話「凶悪の望郷」の監督についてです。彼はWikipediaが存在しない活躍者です。「2大視聴率30パーセント 刑事ドラマの形成貢献のTV名匠と映画巨匠チーフとそのセカンド」ス、ッ、スタートです。
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「凶悪の望郷」の鍵と扉 平成最後はテレビドラマに多大影響を与えているアノ男が大トリを飾るナショナルに込めた想い? 特撮ドラマの有名作『ナショナル・キッド』の斬新なテーマ
永野靖忠は東映の特撮30分ドラマの『
ナショナル・キッド』(1960~1961)の助監督を経て、1960年代に『
特別機動捜査隊』(1961~1977)、『
鉄道公安36号』(1963~1967)と東映の初期のヒット刑事ドラマの監督で多数の監督担当、実積を積み、天知茂の最初のテレビドラマ主演代表作ともいわれる『
悪の紋章』(1965~66)と『
七つの顔の男』(1967~1968、高城丈二が主演。片岡千恵蔵の映画「多羅尾伴内シリーズ」のテレビドラマのリメイク作)でチーフ監督、『
白い巨塔』(1967、
佐藤慶の主演版、山崎豊子原作)、東映特撮30分ドラマの名作の『人造人間キカイダー』(1972~1973)、『キカイダー01』(テレビドラマ版、1973~1974、
永野靖忠はチーフ監督)に参加、ほぼ東映のテレビドラマ監督の一筋でした。
残念ながら映画監督のクレジット表記としては1973年の『キカイダー01』(映画版)のみです。テレビドラマでは活躍しましたが映画ではチャンスもほぼなく、活躍はできませんでした。
ナショナルキッド DVD-BOX デジタルリマスター版東映(東映テレビプロダクション)とNET(現テレビ朝日系列)の初期の特撮ドラマの有名作『
ナショナル・キッド』(1960~1961)、
永野靖忠は助監督で参加、TBS系の「水戸黄門」や東映の数々の有名テレビ時代劇を脚本を担当した名脚本家の宮川一郎も参加、地底人、宇宙人、海底人などの現代でも斬新なテーマにこの1作で挑戦し、SF要素もふんだん、今観ても斬新な挑戦に教わることが多い作品です。
このドラマはスポンサーの松下電器(現・パナソニック)の「ナショナル」ブランドをタイトルに使用し、当時の子どもにブランド名のイメージ、印象を植え付けたい意志の現われを感じさせます。
さらに天知茂のテレビドラマの上位代表作『非情のライセンス』(第1~3シリーズ、1973~1980、
永野靖忠はシリーズの事実上のチーフ監督)、『特捜最前線』(1977~1988、重要な1話などに参加)、松竹の「必殺シリーズ」の現代劇版『ハングマンシリーズ』(第1~6シリーズ、1980~1987 第2と第3シリーズの新ハングマンはチーフ監督)、その後1977~1992年まで2時間ドラマが基本的な活動場所になり、2時間ドラマの監督を主軸としながら『はぐれ刑事純情派』の第1シリーズ(1988)にも参加しています。
永野靖忠は東映のテレビドラマに貢献した名監督といえる実積の持ち主です。
*チーフ監督はそのドラマの形成にもっとも関与、1話を担当したり、重要な話数、そのドラマでもっとも多く監督を担当するなどの要素があり、事実上のドラマ映像化の生みの親としてもっとも貢献している監督を指す。
永野靖忠の主なテレビドラマ監督としての有名作品の参加数
永野靖忠は多くのテレビドラマの代表的作品に参加しています。そのなかでもやはり刑事ドラマへの貢献が大きなものだといえるでしょう。
永野靖忠の主なテレビドラマ監督としての有名な参加作品
『タイトル』 (放送期間) 簡単なジャンルや要素
『特別機動捜査隊』(1961~1977) 刑事、サスペンス *最高視聴率30パーセント越え
『鉄道公安36号』(1963~1967) サスペンス、捜査官、鉄道 *最高視聴率30パーセント越え
『悪の紋章』(1965~1966) サスペンス、捜査、復讐
『七つの顔の男』(1967~1968) 探偵、ヒーロー、捜査、刑事、アクション
『白い巨塔』(1967) 医療、サスペンス
『人造人間キカイダー』(1972~1973) 特撮、ヒーロー
『キカイダー01』(1973~1974) 特撮、ヒーロー
「非情のライセンスシリーズ」(第1~3シリーズ、1973~1980)
刑事 ハードボイルド、アクション *高視聴率
『特捜最前線』(1977~1988) 刑事、サスペンス *高視聴率
「ハングマンシリーズ」(第1~6シリーズ、1980~1987) 裁き、汚職、事件 *高視聴率
『はぐれ刑事純情派』(第1シリーズ、1988) 刑事、サスペンス *高視聴率
永野靖忠の大きな実積としては
最高視聴率30パーセントを越した『
特別機動捜査隊』(1961~1977)と『
鉄道公安36号』(1963~1967)の初期の刑事ドラマの2作に多数参加、貢献したことは大きく、この2本は日本の刑事ドラマの確立に大きく貢献したといえるでしょう。
天知茂の最初のテレビドラマの主演代表作の『
悪の紋章』(1965~1966)は天知茂ののちの「非情のライセンスシリーズ」シリーズや長編ドラマシリーズの「江戸川乱歩の美女シリーズ」(1977~1985、明智小五郎の探偵ドラマ)につながる最初の部分に大きな貢献したという位置づけになります。天知茂はこの『
悪の紋章』をきっかけにテレビドラマの主演俳優としての活躍の路線を事実上のスタートさせたのですから、この部分だけでも永野靖忠は影の功労者です。
次に『
七つの顔の男』(1967~1968)と『
白い巨塔』(1967)は二つとも映画がヒットした有名作です。後者の『
白い巨塔』は田宮二郎の主演などで映画と2000年代までいくつかのテレビドラマが作られています。実はこのテレビドラマ『
白い巨塔』(1967、東映製作)は田宮二郎の主の映画『
白い巨塔』(1966、監督は山本薩夫)の翌年にテレビドラマ化され、主演の
佐藤慶は第5回ギャラクシー賞第1回期間選奨受賞対象とあります。このドラマは『白い巨塔』の初のテレビドラマ化作品でした。テレビドラマ『白い巨塔』(1967)映画の名匠の
関川秀雄がもっも重要な1話や2話などを手掛けた事実上のチーフ的立場だったと考えられ、永野靖忠はこの流れを受けた途中、中継監督、セカンド的立場だったようです。
『白い巨塔』のテレビドラマにも参加 忘れ去られた巨匠関川秀雄
関川秀雄は1938年から1942年の東宝映画の製作主任を経て、 戦後に戦争の影響でデビューが遅れる不運に見舞われ、東映映画中心に独立映画路線の活動の流れをたどることになります。
1951年の鉄道の記録映画、ドキュメンタリー要素の名作『鉄路に生きる』は1952年ヴェネツィア国際映画祭の教育映画部門で高く評価され、東映初の超大ヒット戦争映画、ドキュメンタリー要素『日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声』やベルリン映画祭長編劇映画賞受賞のキュメンタリー要素、名作独立映画『ひろしま』、
*『日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声』は東映の重役兼映画スターだった片岡千恵蔵や市川右太衛門に製作やその公開を反対されたという有名なエピソードが残されています。日本人を苦しめた戦時下、国民に苦しい感情を呼び起こさせますし、千恵蔵や右太衛門自身も戦中に現実に作りたい映画か作れず苦しんだわけで、無理もない普通な反対でした。このエピソードは東映映画で活躍した巨匠の沢島忠もインタビュー番組で話していました。
名作教育映画、児童映画、ドキュメンタリー要素『トランペット少年』(製作=東映教育映画部、配給=東映)、ドキュメンタリー要素の刑事映画「警視庁物語シリーズ」の3、4作目、東映の児童向け娯楽映画「少年探偵団シリーズ」の3、4作目を手掛け、ドキュメンタリー要素が強い1969年度邦画興行ランキングの2位の大ヒット映画『超高層のあけぼの』(東映の配給)などの多くの幅広い代表作を残しました。1960年『鉄道開通88周年記念映画 日本の動脈』では監修
関川秀雄は東映のスター路線以外の映画の形成や児童映画、独立映画の活躍、ドキュメンタリー映画の発展に幅広く貢献しました。大まかな代表作は10作を越しており、確実に名匠、考え方次第では巨匠といえる人物でしょう。監督数は53作、幅広い貢献やジャンル、確実な代表作の多さ、競争力が高いレベルの時期の日本映画界なので巨匠といえる要素は強いです。
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永野靖忠や
関川秀雄が監督で参加した『白い巨塔』(1967)の2000年代の映像化版、現代風に高視聴率を記録したフジテレビで放送の唐沢寿明の主演版「白い巨塔」
永野靖忠の関与から合流へ 千恵蔵の『七つの顔の男』と高城丈二の『七つの顔の男』が生んだ奇妙な縁
高城丈二の主演『
七つの顔の男』(1967~1968)は片岡千恵蔵の数多くある映画の代表シリーズの一つ『多羅尾伴内シリーズ』(別名・七つの顔の男シリーズ)のテレビドラマ化版です。ここで永野靖忠と片岡千恵蔵の縁が生まれています。
このテレビドラマ『七つの顔の男』の監督参加時点では直接は関与していませんが、片岡千恵蔵の映画のテレビドラマの映像化を担当している関連が生まれ、のちに『非情のライセンス』第1シリーズの40話「凶悪の望郷」(1973年放映)で片岡千恵蔵のゲスト回を監督することになります。5年越しに実現した、いや実現してしまった映画とテレビドラマの隔てた関わりからテレビドラマで合流、2人の関わりは奇妙、不思議な縁を感じさせます。
2019.2.10にこの記事の裏記事公開
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