テレビドラマで1970年代には視聴率30パーセントを記録するなど、大ヒットを記録した時代劇の「
大岡越前」は、さまざまな映画スターたちが戦前から戦後にかけて演じています。タイトルは「
大岡政談」としても多く作られていますが、大岡もの、魔像ものなどとも呼ばれることがある題材も存在しています。けっこう複雑です。
テレビドラマの「
大岡越前」は1970年にTBS系列でスタートしましたが、
東映が制作に大きく関与していることでも知られています。
大岡越前は
東映の映画時代に幾人かの映画スターが演じて、影響や題材の要素などがテレビ版に引き継がれた部分が考えられています。その可能性の一部分に触れてみましょう。
東映が映画化した後の
大岡越前に影響したと考えられる「
大岡政談」の映画
①1955年 「
大岡政談 血煙り地蔵」主演・
大岡越前守
月形龍之介監督・
伊賀山正徳 脚本・結束信二
②1955年 「
大岡政談 黄金夜叉」主演・
大岡越前守
月形龍之介 監督・
伊賀山正徳 脚本・結束信二
③1958年 「
大岡政談 幽霊八十八夜」主演・大岡越前守
大友柳太朗監督・佐伯清 脚本・中田竜雄、佐伯清
④1959年 「
大岡政談 千島の印篭」主演・大岡越前守 主役・
片岡千恵蔵監督・佐々木康 脚本・結束信二
⑤1960年 「大岡政談 魔像篇」 主演・大岡越前守・魚心堂(2役)
市川右太衛門監督・河野寿一 脚本・高岩肇
東映の大岡政談の映画タイトルでは計5作が確認されています。この5作では
月形龍之介⇒
大友柳太朗⇒
片岡千恵蔵⇒
市川右太衛門の順で演じている特徴がみられます。
月形龍之介と
大友柳太朗は助演も多数ありますが、5名とも
東映を代表する映画スターが演じていた歴史が存在しています。
ドラマや映画に興味がなくても漫画から軽く読める大岡政談や大岡越前。まずは興味を持ってもらうことも大切です。1、2作目の1955年「大岡政談 血煙り地蔵」と「大岡政談 黄金夜叉」は監督と脚本、製作者も同じことから同じことから関連作であることが伺えます。この2作はCS放送で何度か放送されています。監督の
伊賀山正徳は伊賀山正光と改名して映画やテレビドラマの監督として活動を続けていきます。
伊賀山正徳(=伊賀山正光)はテレビドラマでは、「特別機動捜査隊」や天知茂が主演した1970年代の
東映の刑事ドラマ「非情のライセンス」などでも何度かクレジットが表記されているのを確認しています。1930年代の時代劇が中心の日活時代から、1980年頃までテレビドラマの現代劇、時代劇において監督を務めているため、約50年近い長期の活動です。
脚本・結束信二という脚本家、このブログでも何度か取り上げていますが、戦後のデビューでは世界トップの数を誇るほど、東映の時代劇を支えた職人脚本家の名手でした。以前に書いていますが、テレビドラマでも東映・NETの「新選組血風録(1965)」や「用心棒シリーズ」など、いくつかの代表作を残しました。
「大岡政談 血煙り地蔵」と「大岡政談 黄金夜叉」で主演の
月形龍之介は、日本の映画史にとって大きな貢献・痕跡を数多く残した俳優です。数多くの有名な役を脇役を中心で演じ、戦前と戦後を通すと500作以上の映画に出演し、戦後は少なめですが、主演数は通算で120作近くが確認されています。また、戦前からほんとに数多くの主演映画スターを支えてきました。その数は軽く書いても50名以上に到達します。戦前と戦後の両方を通して活躍して、500作以上の映画出演数は世界1位です。
戦前と戦後を通して、軽く数えても1920年代から1970年代前半まで、50年ほどで100作以上の数多くの有名・ヒット映画に出演した本当の銀幕の超大俳優でした。海外にはこんな名俳優は誰もいません。日本にこのような大記録を残した俳優がいたことを、名前さえも知らない若者に伝えることも大切です。
ドラはこの人のことを理解しているつもりですが、
片岡千恵蔵と並ぶほどに詳しく話したらほんとに長くなる本当の俳優です。それだけ大俳優といえる要素が数多くあります。
左の著名な時代小説家・林不忘(はやしふぼう)のほかにも大岡政談の原作は多数存在しています。ドラマでも「用心棒シリーズ」や「天を斬る」などで2度で出演しているのを確認しています。最近もチラっと観直ししましたが結束信二の脚本による「天を斬る」(1969)の悲劇の死を遂げた武士の父親役はよかったですね。生前には息子の将来を考えて、あえて突き放しながらも死んだ息子のために尽くしてくれた、主人公たちに感謝を述べる役柄を言葉少なめに演じています。
少ない言葉。最近まで生きていた俳優でいうと
高倉健もそんな演技をしていましたが、セリフは多くしゃべらせればよいわけではありません。セリフを多くしゃべられると同時に安っぽく軽くなります。
月形龍之介も晩年は
高倉健のように自分なりの経験を活用した熟練の技を感じさせてくれました。
ドラマだとドラマ俳優の幅に当てはめられるため、映画とは違う風に定着してしまいがちですが、月形龍之介という唯一無二の俳優はドラマでも映画でも真に名俳優だと感じさせてくれます。
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